修繕日記 那覇市首里
25歳の秋から1年半、沖縄県立芸術大学に声楽の研究生として在籍していました。
専攻は違うお隣の科でしたが、そこで触れた琉球の伝統芸能の世界が、
「声を響かせて豊かに歌わねばならない」と思い込んでいたわたしの身体には衝撃的でした。
賑やかに演奏されるカチャーシーの印象が強い方もおられるかもしれませんが、
三線一本で歌われるゆったりとした息の長い沖縄古謡は、
憂いに満ちていて、琉球音階の狂気がそっと細胞に入ってくるようで。
女性に霊感の強い方が多いのは、
島を出て行った男を待つことが多かったから、と教わりました。
わたしも金城の石畳の途中にある小さな家に住まわせていただき、
そこを退去した後は首里鳥堀町というモノレールの終点から歩いて、
ベンガ岳という御嶽の隣に住んでいました。
なんとも沖縄のスピリチュアルな部分に触れる留学でした…今思えば。
あまりに強烈な体験で、しかもあまり覚えていないというのはどういうことか。
オペラを歌う才能がないと思い知る留学でしたし、
寂しくて弱ってしまい、何が食べたいのかわからない。
また23歳までしか採用がないアルバイトの募集に、まだ20代にして自分を年寄りだと思い込んでいる。
首里城は、そんな先の見えない不安をかかえておかしくなりそうな私が、
いつ見上げても変わらず山の上にありました。
城壁の向こうに、造作のきれいな横長のお城。
天守閣的なものがないので、大きなお屋敷といった風情です。
東京から友人が遊びにくると、ライトアップされた首里城がよく見えるところへつれて行き、庭で一曲歌ってご褒美にそのお店の屋根裏「特別ゾーン」に入れてもらってご主人とお酒を飲んだりしました。
(自動車免許も沖縄でとったんですけれど、教習受けながらとか、送迎バスの中とか、よく歌わされました)
毎日首里城公園のソフトクリーム屋の前を通り、
タイミングがあると売り場の女性にぎこちなく目礼をしていました。
さて、そんなわたしが夢中になったのは、
同じ西洋音楽科の学内演奏会ではなく、
邦楽科(沖縄県芸の場合は、邦楽というと琉球古典芸能がメインです)の学内演奏会でした。
入りびたりました。
あまり古典芸能が好きなので、師匠が邦楽の大学院生が行う「組踊」のワークショップに参加させてくれました。
娘道成寺と同じような女性の狂気のストーリー「執心鐘入」で組踊の基礎を知り、
創作組踊「スイミー」を子どもたちと一緒に作る現場を見せていただきました。
その当時大学院生だった方たち、
なんと今度、池袋にも来てくださるようです。
https://toshima-theatre.jp/event/000158/
ちらしを見たとき嬉しくて即チケットを取りました。
奇しくも土用休みの最後の日。
組踊の押さえた所作や、静かで熱い音は、
観光や、ニュースでは見られない沖縄の大事な部分を表していると思う。
その芸能が育った首里城の姿を思い出しながら、行ってこようと思います。
さて、11/24(日)ですが、
当初行うはずでした「律」はキャンセルし、
沖縄出身のフェイシャルリフレクソロジスト向井阿寿華さんにお誘いいただいた
首里城再建チャリティのイベントに参加することにしました。
場所は「律」と同じ、
展示室showroom-tokyo 2Fの和室です。
ちらほらと予約も入っているようですが、
イベントページが今にできるようですから、
みなさま日程空けてお待ちください。
またご報告します。